~認知症の基本AD~
ニコニコタウンきいれでは、「認知症ケア」のスキル向上に積極的に取り組んでいます。
認知症ケアの第一人者であられる、黒野 明日嗣(くろの あすつぐ)先生をお招きし、直接ご教示いただけることになりました。
2022年7月21日(木)第二回 題名:認知症の基本ADとしてご講義いただきました。
今回の受講者は、生活支援員、理学療法士、看護師、ケアマネジャー、相談員からなり、総勢65名でした。
新型コロナ感染対策から3会場をネット中継しました。
~認知症の基本AD~
認知症の原因疾患では約7割がアルツハイマー型認知症であるため、「アルツハイマー型認知症(AD;Alzheimer’s disease)を制するものが認知症を制す」といわれています。
ADの本質と交流分析を交えてご講義いただきました。
一つ目の本質は、➀新しいことが覚えられない、②時間が分からない、③場所が分からない、この3つになります。ADは比較的ゆっくりと脳機能が低下し、記憶力・理解力・判断力が年単位で下がり、症状はゆるやかに進行します。発症の10年以上も前から、脳の変容が始まり、発症すると「いつ・どこで・誰が」の認識ができなくなり行動心理症状が生じます。一方行動心理症状は、自分ではどうしようもなく、多くは不安を感じることで引き起こります。
二つ目の本質は、感情は正常なことです。情動記憶を司る原始的な脳の扁桃体は、ADでは障害され難く、感情を作り出す役割を担っています。危険な物をみて「ギョッ」とすれば扁桃体は興奮し活性化します。
大声を上げているADを例に挙げて、何が必要かを検討しました。
その人を理解するコミュニケーションが重要だとする意見が出され、成立する会話について、心理学でいう心理学理論に基づく心理療法 交流分析(TA;Transactional Analysis)を学びました。
TAは、精神分析に基礎を置いた人間学的心理学の哲学を有した心理療法です。
1950年代にエリック・バーン博士により創始され、観察できる行動に焦点を当て、言葉と図示による分析が特徴です。「交流」に焦点をあてた、個人の性格傾向を測定し、その交流傾向を分析することで問題に対処する方法です。
その人の性格傾向を「親」「大人」「子供」「自我状態」に分けて理解します。会話の中で自分のあり方と自我状態を引き出し、日常の会話・やりとりのパターンを分析します。意図的にかかわり状況判断します。
私を、①両親の私、②大人の私、③子どもの私とします。
あなたを、④両親のあなた、⑤大人のあなた、⑥子どものあなたとしてADの周辺症状をコントロールするコミュニケーションを行います。
ADの周辺症状をコントロールできるコミュニケーションは、①⇆④、②⇆⑤、③⇆⑥になり、コミュニケーションで気持ちをやり取りします。一方、③→④、②←⑤では気持ちが通じない会話になります。気持ちが通じる会話は、③⇆④になり、②⇆⑤、③→④は裏の意味を持つコミュニケーションになります。
自我状態を自発的に替えることで、自律的な自分を発見していきます。
認知症ケアで大事なことは、その人を深く理解すること、支援の場における支援者の反応になります。
会話を成立させるために、コミュニケーションスキルだけでなく、気持ちのやり取りや専門職として習得すべき知見をご教示いただきました。
最後に黒野先生から、認知症ケアは創造的・独創的な仕事だとして、よりスキル向上に努めるべく、学ぶべき文献を示されました。さらに、表情解析の研究に取り組む当社に、積極的に研究してくださいと激励のお言葉をいただきました。
黒野先生、臨床に基づいた素晴らしい知見をご講義いただき本当にありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
※研修は出席者の体調・体温・接触管理・ワクチン接種・手指消毒・室内換気を徹底し行っております