第6回 新入社員研修カリキュラム Web研修
第1部 「利用者の望む援助:利用者主体」について
今回の研修は、新入社員の皆さんに、前もって「利用者主体」「利用者の望む援助」について検討してもらい、各々発表したうえで田中先生より解説とご指導をいただきました。
田中先生は、それぞれの発表を総括して、「生きる」を福祉の目線でみるように話され、ここでいう「生きる」には模範的解答はなく、法律を違反しない限り間違いはないことをご説明くださいました。たとえば、煙草を吸う権利があれば、吸わない権利もある。決して体に良くない喫煙が、「生きる」とぶつかるようにみえるが、一つの権利だけで「生きる」を考えず、考え方は色々あることを念頭に据えて、表裏を一体として考えると、自ずと、適するケアがみえてくるとお話になりました。適するケアは一つでなく、唯一がないとご説明いただきました。
新入社員の皆さんは、私の考えはこうだと、自信を持って発表されました。「本人がやりたいことをサポートする」「全て手伝うのではなく、できるだけ本人の力を引く出す」「本人のやりたいことをサポートしつつ、できることは本人にしていただく」「ご利用者様の自己選択、自己決定を尊重しケアすることで、ご利用者様の高いモチベーションが維持できる」などの発表がありました。田中先生は、自己選択・自己決定を尊重することが何よりも大切で、利用者主体とはご利用者様が中心であることを理解しケアすることだとご説明くださいました。自分の人生は自分自身のものですが、一人で生きているわけでもありません。他者との関係性の中で生きているので、他者に迷惑を掛けない範囲で自分のやりたいことを行う、これが利用者主体だとご教示いただきました。
田中先生は喫煙を例に挙げて倫理をご説明くださいました。お互いに尊厳のある人が喫煙について意見がぶつかったとき、煙草を吸う人は「なぜ吸っちゃいけないんだ」となり、煙草を吸わない人は「病気になる、気分が悪いから吸うな」となります。どういう落としどころにするのか検討し、「煙草は決められた喫煙所で吸う」とした折り合いを付け、これには誰も文句はいわないと決めたとします。これがルールであり、倫理になるとご説明くださいました。倫理には規則があり、その中では自分の生きたい人生があります。かたや人生の途中で、脳卒中で倒れ身体が動かなくなり、他者の援助が必要になる場合があります。そこに介護の必要性が生まれます。
利用者主体で重要なのは、人生はご利用者様のものであり、どのような援助が必要なのかを見極めるチカラになります。たとえば、「私は何もできないのでほっといて下さい」と訴えがあったとすると、本人が望むことを受け入れて「何もしないで良いのかな?」と考えるのは素人の考え方になります。専門性のあるケアでは、他者との関係性や自分とご利用者様の関係性を大切にしたうえで、ご利用者様の感情に働き掛け、望んでいる人生を見出します。今の状況を詳細に判断し、「これで良いのか?」「本人の望む人生は何であったのか?」「どうしたら喜ばれるのか?」を見極めるチカラが専門家には求められます。田中先生は、見極めるチカラの重要性について事例を挙げてご指導いただきました。
第2部 「利用者の望む援助:利用者主体」について
田中先生は、マズローの欲求を通して生活の夢をご説明くださいました。人は、三大介護、入浴、排泄、食事で生きているわけではありません。これらは、あくまで手段の一つであり、自分なりの自分らしい生活が最も重要であることを学びました。
今回のカリキュラムにて、利用者の望む援助・利用者主体をテーマに、田中先生より幅広くご指導いただきました。日常生活の中でご利用者様の声に耳を傾け、本人が望んでいる人生に寄り添い、お一人お一人の生きがいを見出しながら、笑顔あふれる毎日を過ごして頂けるようこれからも努めて参ります。
田中教授、本日はありがとうございました。
コロナウィルス感染対策を考慮し、リモートでの研修を開催させて頂きました。