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第7回 新入社員研修カリキュラム Web研修

第1部 適切な生活支援

介護は、日常生活で私たちが当り前のように行っている関わりに含まれる福祉サービスの原型ともいうべき援助の姿です。生活支援員が行う支援は、でき無くなくなった生活手段への支援が介護に変わったものです。生活支援員には、対象者に「どのような困りごとがあるのか?」を把握したうえで、「こうしたらどうでしょうか?」と納得が得られる声かけや介護を検討するプロセスが求められます。生活支援のプロとして、その人が望む生活はどうあるべきかを考え、専門職としてどの部分に支援が必要なのか見極め、専門性に基づいた介護の提供で生活の質を高めます。

私たちは、認知症を経験したことがありませんが、専門職として認知症の方と関わります。認知症という症状が分からなければ、認知症の作話や嘘の背景は分からず、騙されたと腹を立てることになります。精神障害も同様です。私に精神障害があったとします、薬で症状が落ち着いていますが、

薬を止めると様々な症状が生じます。いわゆる統合失調症です。私の考えが遠い向こうに電波で吸い取られてしまう。だから「静かにしろ」という行動になります。認知症や精神障害を体験したことはなくても、生活支援のプロです。これらを十分理解した支援を提供する必要があります。必要で適切な支援で生活の質を高める役割が生活支援員には求められ、職種を問わずそれぞれの立場に立って、その人が望むあるべき生活を考え、専門性に基づき関わり支援していくのが介護です。
長い間、当たり前にみえる介護のやり方が、当たり前すぎるがゆえに、介護には専門性はいらないとされてきました。介護福祉士の国家資格が1987年に誕生し約35年経過し、専門性を高めた多くの介護が実践され、生活支援の専門性に加えて、誰でもできる仕事でないことが周知されつつあります。
対象者の残存機能を踏まえた支援も重要ですが、手伝ってほしいという甘えの感情を受容し、その人の頑張る活力を引き出すことも重要です。感情を受け入れた適切な支援が最も重要になるとご教示いただきました。

第2部 介護の定義

介護は、顕在的・潜在的障害に、日常の生活で何らかの援助(ケア)を必要とする人に行われる補完的活動(行為)の全てを指します。自分で出来る範囲は自分で行い、出来なくなった時、補う全ての行為が介護となります。介護とは、要介護者の日常生活動作を高める支援技術と生活の質を高める生活支援の総称になります。
介護は狭義の介護と広義の介護で構成されます。多くは狭義の介護で成り立っていますが、広義の介護を含めることで初めて介護になります。狭義の介護は介護技術と援助技術に分かれ、介護技術にはADLの介護技術(医学・運動学・リハビリ医学)があります。IADL対応は家政学や建築工学を、援助技術としては社会福祉学やコミュニケーション技術を学びます。一方、広義の介護では、他者理解・自己理解を学びます。他者理解では哲学や精神医学を学び、人間は絶対的な存在であることを深く理解することが求められます。さらに人間は社会的な存在でもあり、心理学や法学や社会学を学ぶことが求められます。自己理解も大切で、人は過程的な存在であることを学ぶ必要があります。従って、介護は誰もができる仕事でないことが裏付けられます。その人の人生が豊かなものになるように、どうしたらその人の人生が幸せになるかを考える専門性が問われます。
生い立ちや、その人の生き方を十分理解することも重要で、理解していない介護は親切の押しつけになります。親切をボランティアで考えると、ボランティアはできないことのお手伝いであり、生活支援員が行う介護は必要性を踏まえた支援であり、ボランティアとは大きく異なります。生活支援員の介護では、黙って見守る行為でも大切な援助である場合があります。危険が生じれば即応できる体制で見守り、残存能力を奪わない支援が提供されます。おひとりお一人の幸せを検討した支援が専門性を醸成していくと田中先生よりご教示いただきました。

今回のカリキュラムで、介護の定義を田中先生よりご指導いただきました。対象者との関わりの中で、専門職としての関わり方や他者理解について知識を深め、どのような関わり方が専門職として必要とされるか学ぶことができました。今回の研修を活かし、喜びある日々を過ごしていただけるよう努めていきたいと思います。
田中先生、本日はありがとうございました。
コロナウィルス感染対策を考慮し、リモートでの研修を開催させて頂きました。