第10回 新入社員研修カリキュラム Web研修
前回講義 新入社員からの質問
居室のコールボタンを何度も押すご利用者様がいらっしゃいます。訪室すると、「何もないよ。」と話されます。ご利用者もお一人ではないので、時間をかけて対応することができません。どのような対応を行えばよいでしょうか。
田中先生の回答
最初、用事がないときにコールボタンを押す人はどんな人か考えてみましょう。相手の立場を想像してみることが大事です。
次に、対応して居室を出た後に、少しご利用者の様子を伺ってみる。どんな行動をとられるか観察し、行動が起きるきっかけを探ってみてもいいですね。
もし、不安や不満からくる行動なら、本人が安心や満足した気持ちで居られるような言葉がけ、環境づくりを考えてみると良いでしょう。
たとえ用事がなくても、その人にとってコールボタンは、職員が来てくれる命綱のような役割があるかもしれません。利用者の心の声に耳を傾けてみてください。
テーマ:介護の専門性について
介護の目標は、介護を必要とする人の生活を支援すること。生活支援における「介護者」と「介護の受け手」の関係性を学びました。福祉は、ニーズへの対応が基本となります。これは、単なる「必要」ではなく、必要性のなかでも、切実と感じられる「必需」への対応になります。サービス提供者の意識度の如何に関わらず、サービス提供者が有利な上下関係があります。この関係性が弊害をもたらす場合があります。
介護はサービス業であると認識したうえで、介護の哲学・倫理をもって、利用者との対等な関係を保つこと。この関係性の保持こそが専門家である介護福祉士の持つ専門性であるとご教示いただきました。
専門的介護を実践するためには、自己理解と他者理解が必須になります。
「自分の価値観を知り、相手の価値観を知る。」このことで「私はこういう価値観があるから人のこの価値観に対して、批判したくなるんだな」と、審判しない態度がとれるわけです。
介護は善悪では捉えられません。正しい手続きや手技で介護をしているから「善」だ、という固定観念を持たないこと、介護の哲学・倫理が求められるとことを学びました。また、思考停止に陥らないために、非審判的態度のコツをご教示いただきました。
田中先生は、高齢者人口は年々増加していることを挙げられ、福祉施設は、特養・グループホーム・有料老人ホームなど多様になり、崩れた需給バランスを反映し、どこでも簡単に入れるにようになったとご説明くださいました。今なお、福祉サービスが整備されている現状をお話になり、「選ばれない事業所は淘汰される未来がすぐそこにきている。」「福祉施設は、利用者に選ばれる半歩先のサービスを提供し続けることが重要だ」と、専門性を高める必要性をご説明くださいました。さらに、生活は極めて個別的で個性的であるが故、そこに合わせる力量が鍵になるとおっしゃられ、介護の理念と哲学を踏まえた、今後向き合う身につけるべき課題を示してくださいました。
最後に田中先生から、次回研修のテーマ「他者理解の必要性について」自身の考えをまとめる課題が出されました。
今回の研修で、介護の専門性について理解を深めるとともに、自分を知る契機になりました。今後は、自分自身をよく観察し、ご利用者の特性や個性に気づき、より個別的なよいケアが行えるように努めて参ります。
田中先生、本日はありがとうございました。
※研修は受講者の体調・体温・接触管理・ワクチン接種・手指消毒等、室内換気も徹底して行っています。